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 魔女さんは相変わらず僕を真っ直ぐに見つめている。鼓動が早くなっていくのを感じた。 「楽しい記憶じゃない。むしろ、つらくて苦しい記憶。それでも、本当に知りたい?」  あの場の空気感で、楽しい思い出でないことは何となくわかっていた。黒板に書かれた文字からも、想像はできていたはずなのに。こんなに念を押されると、少し怖じ気づいてしまう。  黙り込む僕を見て、魔女さんはさらに駄目押しをする。 「知らない方が幸せなこともある。せっかく忘れられたのだから、わざわざ思い出さなくても良い」  そんなこと言われても。 「知らなきゃいけないと思うんです。頭も心もモヤモヤしていて、今のままじゃ駄目だって、僕自身が言っている気がするんです。怖いけど、僕は思い出したい。だから、全部教えてください」  魔女さんはゆっくりと息を吐いた。 「今日、放課後時間ある?」 「放課後ですか?」 「長くなるから。放課後ゆっくり話したい。時間ある?」 「大丈夫です」 「じゃあ、校門で待ってて」
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