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 目が、もう戻って欲しいと言っていた。生徒がどんどん登校してきている。僕も気まずくなってきた。「わかりました」とだけ言って、僕は自分の教室に戻った。 ***  今日は授業も周囲の会話もまったく頭に、いや、耳にも入ってこなかった。  昨晩の夢は一体何だったのか。いくら考えても無駄だということはよくわかっているのに、どうしても気になってしまったのだ。もし僕の中にある過去の記憶なら、頑張れば思い出せるのではないか。そんな期待を少しだけ持ってしまったりして。結局ヒントすら出てこなかったのだけど。  そして放課後。約束の場所は校門だったが、魔女さんは駐輪場にいた。 「自転車?」  うなずく。 「私も」  チェーンをはずし、ストッパーを上げる。魔女さんがまたがったのを見て、僕も慌てて自転車にまたがる。リュックは背負ったままだ。 「ついてきて」  それだけ言うと、魔女さんは走り出した。目的地を告げられていないから、置いていかれるわけにはいかなかった。たいしてスピードは出ていなかったけど、僕は必死だった。
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