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 途中、前を走る魔女さんに向かって「どこに行くんですか?」という至極まっとうな疑問を投げかけたのだけど、返答はなかった。車もたくさん通っていたし、音にかき消されてしまって聞こえなかっただけかもしれない。しかし、意図的に無視されたのかもしれない。背中から感情を読み取ることはできなかった。  もしも後者、意図的に無視されたのだとしたら、僕はこれからどこに連れて行かれてしまうのだろう。魔女さんは信用して良い人だろうか。夢の中で「信用している」と言われたから、僕も無条件に信用してしまっていた気がする。  でも、それは本当に大丈夫か? 僕を惑わすための魔女さんの罠ということは、絶対にないと言い切れるのか? 魔女さんが何を考えているか、僕には一切わからない。  このままついていくべきか。それとも逃げるべきか。魔女さんは僕の中学時代の同級生らしいけど、記憶を失っている今の僕にとっては「知らない人」だ。昔から何度も言われてきた。「知らない人についていっては駄目よ」と。段々怖くなってきた。心臓がバクバクと激しく鳴っている。逃げよう。
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