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 それなら、窓はどうだろう。もしここが一階、あるいは二階程度なら、窓から飛び降りることができるかもしれない。  そんな小さな望みを持って窓へと進んでいったが、どの窓もかたく閉じられていた。鍵がかかっていたわけではない。いや、かかっているところもあったけど、それは簡単に開けられた。しかし、窓は開かない。鍵はもうかかっていないのに。全身の力すべてを込めても、ビクともしなかった。  廊下側の壁には、すりガラスの窓がはめ込まれている。そちらはどうかと試してみたものの、結果はすべて同じ。この教室は完全なる密室で、僕はそこに閉じ込められてしまっているという絶望的な現状が明らかになっただけだった。  どうしたものかと途方に暮れながら、出ることのできない外に目をやった。真っ黒な絵の具の中にでもいるのではないかと思うような暗闇で、何も見えなかった。そんなことはありえないのだけど、この教室の外には何もないのではないか、この教室だけがどこか異次元に飛ばされてしまっているのではないかとさえ思った。
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