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 とにかく、もっと情報が欲しい。しかし、教室の外がどうなっているのかわからない以上、むやみに明かりをつけるわけにもいかない。誰かがこんな時間に教室に明かりがついていることを不審に思って助けに来てくれる可能性もあるだろうが、犯人に見つかる可能性の方が圧倒的に高い。  僕が意識を取り戻しているということは、犯人に知られるべきではない。もしとどめを刺しに来たら、僕も、今なお転がりつづける彼らのようになってしまう。  目を凝らす。何か、何かないか。  あてもなく、彼らを蹴飛ばさないことだけを気にかけながら教室内をさまよった。そして見つけた。たった一人、椅子に座り、机に突っ伏している少女を。  じっと耳をすませたら、かすかに呼吸音が聞こえた。  彼女は何者だろう。僕と同じく被害者か。それとも、僕を惑わす加害者の仲間か。とりあえず、目視でわかるような大きな怪我はしていないようだった。そして、彼女もやはり制服のようなものを着ている。高校生だろうか。髪は両耳の上で二つに結んでいた。  わずかに横を向いていたから、目を凝らして顔を確認する。  ヒナだった。
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