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 確かに、この状況を正確に把握するためにも、それは知っておいた方が良い。もしかしたらそこに何か手がかりがあるかもしれないし。僕はヒナの方を向いてうなずいた。 「説明っていっても、一つだけなんだけど」 「何でも良いよ。知りたい」 「ここは、私たちが通ってた中学校」  私たちということは。 「僕も?」 「え。あ、うん」  一瞬、驚いたような変な反応をされたが、それは想定内だった。  ここが僕の通っていた中学校なのか。 「もしかして、僕たちこのクラスだったの?」 「そうだよ。三年一組」  この場所は、見知らぬ場所ではなかったということだ。ということは、僕たちが閉じ込められているのは、中学時代の何かに関係しているということだろうか。 「じゃあ、その服は?」  僕の問いを聞いて初めてヒナは自分が身に纏っている衣服に視線を移した。 「これ、高校の制服だ」 「ヒナが通ってる高校?」 「うん」 「学校帰りに中学校に寄ったの?」 「寄ってない。それに、これ冬服だよ。もう夏服の時期だよね?」 「じゃあ、なんでそんなの着てるの?」 「なんでって。なんでだろう?」
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