五 信じたい

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五 信じたい

五 信じたい  理沙が目を覚ますと、もうお昼だった。  ベッドから起きて部屋を出る理沙。 「あ、起きた?」 「うん、よく寝た」 「よかった、気分は?」 「うん、結構よくなった」 「おじさんは?」 「部屋で仕事中」 「家で仕事してるんだ」 「テレワークって言うんだって。月に一回だけ会社に顔出したりしてるみたい」 「ふ〜ん。さっきはごめん、おじさんに変なこと言って‥‥‥」 「びっくりしたよ」 「おじさんには謝っておいた」 「そう、ま、おじさん、そういうのあんまり気にしないでくれるから」 「いい人、なんだね」 「うん、初めて。ひどい男じゃないのは」 「セックスしてるんでしょ」 「うん、でもお世話になってるから体で返してるんじゃないよ。おじさんもそういう体で返すみたいなの嫌いだし。アタシがおじさんとセックスしたくてお願いしてして毎晩してもらってるの」 「どうして?」 「おじさんとは体の相性があってセックスすごくいいの。毎日仕事でセックスしてるけど、一日の最後におじさんとするセックスは仕事じゃないから、すっごく気持ちいいんだ。なんでもしてあげれるし、してもらえるし、ホントに心も体も満たされて今日も幸せな一日だった、って思えるから」 「そんなもんかな、私にはそういうの全然わからないや。セックスなんて男の排泄行為だし、心が満たされたことなんて一度もないし」 「理沙は男嫌いだし、いいセックスしてこなかったみたいだから、しょうがないんじゃない」 「服乾いたら着替えて帰るから」 「これからどうするの、家?」 「探すよ、アパート」 「‥‥‥」 「さっき、理沙が寝た後、おじさんと話したんだけど、理沙がよかったら、落ち着くまでここにいたら?」 「えっ?」 「もう一部屋、使ってない部屋があって、子供部屋だったのが。そこ使っていいって言ってくれたから、ベッドもあるし」 「どうして?」 「ホテル暮らし、お金かかっちゃうし、アパート探してまた暮らせるように色々用意したりとか結構大変でしょ。ウチなら自分の着替えとか必要なものだけあればいいし」 「レナはそれでいいの?」 「別にいいよ、理沙だし」 「おじさんも、そうしたらって」 「でも私レナみたいにおじさんとセックスしないよ」 「アハハハ、そんなの、全然大丈夫だよ。おじさん、そんなことしろとか言わないから」 「物好きなの? おじさん」 「どうだろう‥‥‥。離婚して子供奪われて、生きがいをなくして、ひとりぼっちになって、かなり辛かったみたいで、だから人が傷ついてるの見ると放っておけないんじゃない」 「‥‥‥そうなんだ」 「家賃とかかからないし、食費だけ少し入れてくれればいいよ。アタシも入れてるから、自分が食べてる分くらいは」 「うん、ホントにいいの?」 「うん、無理にとは言わないけど、おじさんと一緒にいると心癒されるし、理沙も男嫌いが少しは治るかもしれないしね」 「じゃ、そうさせてもらおうかな。すごく助かるし‥‥‥。レナ、ありがとうね」 「アタシじゃないよ。ありがとうはおじさんに言ってあげてね」 「うん」  こうして新しい同居人が卓の家に増えたのだった。
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