莉弥

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莉弥

 11月最終の土日、待ちに待ったAtoMのライブに参戦した。  明日は朝から小テストがあるのに、ライブの余韻でそれどころじゃない…。  会場前には女子の群れ。分かりやすくメンカラを着ている人や制服の人、フリフリの一張羅の人に露出高めの人…。みんなそれぞれ、推しから認知される事を夢みて目を輝かせていた。  土曜日は花道ステージからツーブロック右側の席だった。とうとう生で舜を見られる日がきた…そう思うだけで足が少し震えていた。  QRコードを読み込ませて館内に入る。  今同じ建物の中にいるんだと思うだけで涙が出そうになった。  デビューCDに入っていた持ち歌の他に先輩アイドルの歌も歌ったり、トークをしたり…あっという間に時間が過ぎていった。  舞い上がっていた私の記憶は曖昧だけど、それでも…舜を見た瞬間に感じた胸の高鳴りだけは確かに覚えている。  ステージから去って行く姿を見ても、明日も会えるんだと思い寂しくはなかった。  日曜日はメインステージの正面左側の席だった。  セットリスト(セトリ)は前日と一緒だから、舜がどこへ移動するのかは何となく頭に残っていた。  ラストから2曲前…舜が一番近くに来た時に、メッセージ入りのファンサうちわを目一杯高く掲げた。  舜が左手の人差し指をこっちに向けて、曲に合わせてぐるぐると回した。  見よう見まねで作った『ぐるぐるしてッ』というメッセージに、反応してくれた。  ツアーの最終日(オーラス)だったからなのか、ダブルアンコールまでしてくれて最高だった。  だけどステージから去って行く姿に、寂しさで涙が出た。  夢の時間は終わり。次はいつ会えるか分からない。 「ハァー…どうしよう。カッコ良かった…」  ファンサを貰えた幸せと暫く会えない切なさとが交互にやってくる。  今までの人生でこんな風になるまで誰かを好きになった事なんてなかった。  幸せなのに辛くて頭がおかしくなりそう。  全治一生…誰か助けて。
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