慎太郎

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 預かっていた莉弥の分を渡そうと思い、廊下にいたクラスメイトに声をかけた。  学校には来ているけれど、連日個室に籠っていると言われた。  中庭を挟んで奥にある別棟に作業個室が12部屋ある。一部屋10畳程のスペースで、予約制になっている。  中には5人分のロッカーがあり、その中にボディーややりかけのパターンや布等を入れて預けておける。  鳳ランウェイ前の数ヶ月はアイディア流出を警戒して、放課後の個室は争奪戦になる。  放課後じゃなく授業の時間に個室を使う程にランウェイの準備が間に合っていないのだろうか?  別棟に行ってみると、一番奥の部屋が使用中になっていた。 「莉弥」  声をかけてからドアをノックした。  暫くして薄くドアが開けられた。 「慎太郎…何でここに?」 「最新号預かったから渡そうと思って…」 「あ、そうなんだ。ありがとう」  莉弥がドアの隙間から左手を伸ばしてくる。 「準備、間に合ってねぇの?」 「いや、別に。問題ないよ」 「(ひで)ぇツラしてんな」  強引にドアを引き中に入った。
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