夏のミュージアム

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「こんばんは。お待たせ」 翌日。 ミュージアムが閉館して片付けも終わった夜の8時半。 安藤はミュージアムのエントランスで吾郎と待ち合わせた。 「都筑さん、こんばんは。今日はよろしくお願いします」 「ああ。どうぞ、入って」 「はい」 誰もいなくなった館内を、安藤は吾郎について歩いていく。 「今は真っ暗だけど、すぐ明るくなるから。ここで少し待っててくれる?」 「はい、分かりました」 大ホールに着くと、吾郎は安藤を部屋の真ん中に促してから、ドアの向こうに消えた。 シン…と静まり返った暗いホールにポツンと佇み、安藤が少し心細くなった時、サーッと光が差し込むように、ホールが群青色に染まり始めた。 「わあ、綺麗…」 思わずうっとりと天井を見上げる。 やがて無数の星がまたたき、スッと流れ星が降り注いだ。 夏の星座と流星群。 美しく広がる満天の星に、言葉もなく魅入っていた時だった。 「アン!」 可愛い鳴き声がして、安藤は思わず振り返る。 「え、トオルちゃん?!」 「アン!」 間違いない。 一目散に駆け寄ってくるのは、会いたくて堪らなかった可愛いトオルだった。 「トオルちゃん!」 「アンアン!」 飛びついてきたトオルを、安藤はひざまずいてギュッと胸に抱きしめる。 「トオルちゃん、やっと会えた!」 頬ずりして頭をなでると、トオルもぺろぺろと安藤の頬を舐めた。 「トオルちゃん、見て。綺麗な星空ね」 「アン!」 「ふふっ。いつまでもここにいたくなっちゃうね」 胸にしっかりとトオルを抱き、目を輝かせて星空を眺めている安藤を、吾郎は少し離れた所から優しく見つめていた。
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