いつの間にか

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「じゃあねー!私達はもうここで」 ドッグランでひとしきり走り回ったあと、亜由美は透の手を引いて帰って行った。 「ん?なんだ。やけにあっさり別れたな」 「そうですね。お二人、このあとご予定があるのかもしれませんね」 「ああ、そうか。いつまで経ってもラブラブだからな、あいつら」 吾郎と安藤もトオルを抱いて部屋に戻った。 「トオルちゃん、お水飲んでね」 「アン!」 トオルの頭をなでてから、安藤はキッチンへ行く。 「都筑さん、アイスコーヒーでいいですか?」 「うん、ありがとう」 慣れた手つきで冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出して注ぎ、安藤はソファの前のローテーブルにグラスを置く。 「どうぞ」 「ありがとう」 二人でトオルを見守りながらアイスコーヒーを飲んでいると、それぞれふと今日のことを思い出した。 透に「男を見せろ!」と言われた吾郎。 亜由美に「あなたは吾郎さんのことが好きです」と言われた安藤。 そのセリフを思い出した途端、二人は妙にギクシャクと緊張し始めた。 「あの、ちょっと話をしてもいいかな?」 「はははい!どうぞ」 二人は居住まいを正して向き合う。 「えっと、まずはいつもトオルを可愛がってくれてありがとう」 「そんな、とんでもない!私の方こそ、いつもトオルちゃんと遊ばせてくださってありがとうございます」 「こちらこそ。これからも変わらずトオルと遊んでやってくれるかな?」 「もちろんです!私の方がお願いしたいくらいです」 「ありがとう。それで、その…」 「はい」 吾郎は思い切ったように顔を上げた。 「俺はずっとこんな日々が続けばいいのにって願っている。君がいて、トオルがいて。笑顔が溢れる時間が、いつの間にか大切でかけがえのないものになっていたんだ。これからもこの幸せな瞬間をずっと俺にくれないかな?」 安藤は、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。 「ええ、それは、はい。私にとっても、トオルちゃんと都筑さんと過ごす時間は何よりも幸せで楽しい時間です。許されるなら、ずっとずっといつまでも、この時間が続けばいいのにって願ってしまいます」 「そうか!それなら、そうしよう」 「はい、よろしくお願いします」 「うん、こちらこそ」 互いに頭を下げると、シーン…と沈黙が広がった。 (そうしようって、どうするの?) 二人の頭の中に、同じ疑問が浮かぶ。
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