いつの間にか

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「えっと…」 「は、はい」 吾郎が再び口を開くと、安藤も身を固くした。 「あの、毎週末君をマンションに送り迎えするのもなんだから、ここで一緒に暮らすのは、どうかな?」 「あ、そうですよね。いつも車で送り迎えさせてしまって、本当にすみませんでした。お手数おかけしました」 「いや、それはいいんだけど。いつも別れ際にトオルが悲しそうにするのも忍びなくて」 「私もです。トオルちゃんと離れる時は、いつも涙が出そうになります」 「それなら一緒にここで暮らして、別れなくてもいいようにしよう」 「それはトオルちゃんの彼女として、ってことですか?」 「いや、トオルのママで、つまり俺の妻ってことで」 「ママでツマ…。え、妻?!」 安藤は目を丸くして軽くパニックになる。 「え?彼女はどこに行ったんですか?」 「えっと、彼女は通過してしまったかも」 「通過?通り過ぎちゃったんですか?」 「うん。トオルの彼女を通り過ぎてママになって、俺の彼女はすっ飛ばして妻になる」 「すっ飛ばす?そんなことあるんですか?なんだかゲームのワープみたい」 「まあ、そうだな。あっという間にゴールイン。ダメかな?」 「いえ、ダメではないですけど。でもいいんですか?ワープとか、なんだか裏ワザみたいで」 「大丈夫だよ。裏ワザなんかじゃない。だって俺、君のこと本気で好きだから」 思わず息を呑む安藤に、吾郎は優しく笑いかけた。
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