人生の全て

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「莉沙、そろそろ寝る時間だよ」 「はい、このお皿洗ったら行きます」 莉沙が引っ越して来て、すっかり二人と一匹の暮らしにも慣れた頃。 吾郎は毎晩密かに戦いを繰り返していた。 「お待たせしました」 パタパタと近づいて来た莉沙の肩を抱き、吾郎はゴクリと生唾を飲み込んでから、そっと電気のスイッチを消す。 リビングが暗くなった次の瞬間… 「アン!」 トオルの声が聞こえてきて、吾郎はガックリと肩を落とした。 「トオルちゃん、起きちゃった?」 莉沙はいそいそとサークルに近づき、トオルを抱き上げて戻って来る。 「吾郎さん、寝ましょうか」 「あ、うん。そうだな」 寝室に行くと、莉沙は当然のようにトオルを胸に抱きしめてベッドに横になる。 「トオルちゃん、おやすみなさい」 「アン!」 ふふっとトオルに微笑んでから、莉沙は顔を上げた。 「吾郎さんも、おやすみなさい」 「ああ、おやすみ」 (も?吾郎さん、も?俺は二番目か?) 布団に潜り込むと、吾郎はブツブツと不満そうに呟く。 (ちぇ!毎晩トオルに莉沙を取られちゃう) いじけていると、小さく「吾郎さん」と莉沙の声がした。 え?と布団から顔を出すと、莉沙の顔がすぐ近くにあってドキッとする。 「ど、どうしたの?」 「しーっ!トオルちゃんが起きちゃう」 そう言って莉沙は自分の後ろを振り返る。 そこには身体を丸めてスヤスヤ眠るトオルがいた。 「トオルちゃん、やっと寝たの。あの、吾郎さん。くっついてもいい?」 「え…、ああ!うん、いいとも。よし、来い!」 両手を広げると、莉沙は嬉しそうに身を寄せてきた。 吾郎はギュッと莉沙を抱きしめる。 (はあ、ようやく俺のところに来てくれた) 何度も莉沙の頭をなでながら幸せを噛みしめた。 「トオルちゃんを抱っこするのも癒やされるけど、吾郎さんにギュッて抱きしめてもらうと、安心してすごくホッとするの」 「そうか。トオルよりも俺の方がいい?」 「んー、同じくらい」 ガーン…と吾郎は打ちのめされる。 「でもね、トオルちゃんごと私を守ってくれる吾郎さんが一番好き」 「そ、そうか!もちろん、俺はトオルのことも莉沙のことも、ずっと守っていくよ。誰よりも幸せにするから」 「うん!ありがとう」 にっこり微笑む莉沙に見とれてから、吾郎はゆっくりと莉沙の身体を抱き寄せる。 「莉沙…」 小さくその名を呟くと、莉沙はそっと目を閉じた。 無防備で可愛い表情に目を細め、吾郎は優しく莉沙にキスをする。 ん…と甘えるように吐息を漏らす莉沙を、吾郎はますます強く抱きしめた。 「大好きだよ、莉沙」 「私も。吾郎さん、大好き」 二人は何度も愛を囁いては、互いを抱きしめながらキスを交わしていた。
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