お姫様ごっこ

1/5

1669人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ

お姫様ごっこ

「おっはよーん!」 「おお、透!久しぶり。どうだった?モルディブは」 「うん、もうさいっこう!だったよ。ありがとう、10日間も休ませてもらって」 「いや、楽しかったようで何よりだ」 「はい、これ。お土産ね」 「おっ、サンキュー!」 次の日。 新婚旅行から帰ってきた透がオフィスに現れると、洋平と吾郎は笑顔で歓迎した。 「透、昨日帰国したばっかりだろ?今日も休んで良かったのに」 「しかも今日はクリスマスイブだ。亜由美ちゃんを一人にさせるんじゃないぞ?」 吾郎と洋平の言葉に、透は嬉しそうに頷く。 「うん、ありがとう。お言葉に甘えて今日は5時に上がってもいいかな?」 「もちろん。俺も泉に早く帰るって言ってあるから、そうするわ」 二人のやり取りに、吾郎は、くうー!と苦悶の表情になる。 「あー、羨ましい!クリぼっちは俺だけか。よーし、俺はバリバリ仕事するぞ!内海不動産の件、ものすごいもの作ってやる!」 すると透が目を丸くする。 「内海不動産?そんな大きなところから仕事もらったの?」 「そうなんだよ。俺には仕事の女神が微笑んでくれてるらしい」 早速3人でミーティングを始める。 大河は、午前中はリモートワークで午後に少し出社するとのことだった。 「なるほど、新築分譲マンションね。うわー、いいな、このマンション」 「だろ?一つの街みたいに、公園やクリニック、保育所にスーパー、プールつきのジムやカラオケルームまで入るらしい。ファミリーにはうってつけだな。透、新居にどうだ?」 「うん、今かなり惹かれてる」 「パンフレット渡すから、亜由美ちゃんとも相談してみなよ」 「ありがとう!吾郎」 と、横から洋平が笑い出した。 「吾郎、お前マンションの営業マンかよ?」 「あはは!ほんとだよ。俺、ちゃっかり売り込まれちゃってた。なかなかやり手な営業マンだな、吾郎」 二人の言葉に吾郎は苦笑いする。 「なんか、俺って…。今は仕事に打ち込めって暗示なのかもなあ?ま、それもいいか」 ははっと笑って、吾郎はミーティングを続けた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1669人が本棚に入れています
本棚に追加