お姫様ごっこ

4/5

1670人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
一人になった瞳子は、着ていたジーンズとニットから、シャンパンベージュの光沢のあるドレスに着替えた。 髪もアップでまとめてメイクを整える。 ロングドレスで足首まで隠れる為、シューズはローヒールにした。 準備出来ました、と声をかけると、大河は部屋に入るなり目を見開く。 「瞳子、すごく綺麗だよ」 ベッドの端に腰掛けた瞳子の隣に座り、大河はそっと瞳子の肩を抱き寄せて口づけた。 優しいキスにうっとりしたあと、瞳子は大河の顔を見て目をぱちくりさせる。 「やだ、大河さん。リップが付いちゃった」 慌てて左手を伸ばして大河の唇に触れると、大河は逆にその手を掴んで、瞳子の薬指に口づける。 「俺だけの瞳子。こんなに綺麗な姿を誰にも見せたくない。このまま二人でどこかに行かない?」 「そ、そんな。ダメです。お仕事だから」 「そうだけど…。でも瞳子から目を離したくない。今日のコンサート、聴きに行ってもいい?」 「それが、チケットは既に完売で…」 そっか、と大河は肩を落とす。 「じゃあロビーで待ってる」 「ええ?!コンサートは2時間もあるのに?」 「ああ。瞳子をこれから車で送って行って、そのまま待ってるよ」 「それだと更に長くなります。開演は17時だけど、私、14時半からゲネプロに立ち会うので」 「構わない。ほら、行こう」 「えっ、ちょ、大河さん!」 戸惑う瞳子を抱き上げて、大河は部屋を出た。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1670人が本棚に入れています
本棚に追加