サプライズ

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「よし!じゃあ1曲目の頭から」 マエストロがタクトを構え、皆も一斉に楽器を構える。 その場の空気がピリッと変わり、瞳子はコンサートの冒頭をイメージしながら耳を傾けた。 次の瞬間… え?!と驚いて瞳子は顔を上げる。 聴こえてきたのは、全く別の曲。 (これは…メンデルスゾーンの結婚行進曲?) どうして?と、急いでプログラムを確かめるが、どこにもその曲名は見当たらない。 事態を飲み込めないでいると、冒頭のさわりの部分だけで演奏は終わった。 「まみちゃん、結婚おめでとう!」 マエストロが笑顔で拍手し、次々に、間宮さん、おめでとう!と楽団員達もあとに続く。 「は?あの…」 瞳子は呆然としながら目をしばたかせる。 「間宮さん、結婚おめでとう!これは我々スタッフから」 そう言って川上が、綺麗な花束を瞳子に差し出した。 「えっと、あの?これは一体…」 「サプライズってやつだよ。まみちゃんの結婚を、みんなでお祝いしたくてな」 マエストロの言葉に、瞳子は信じられないとばかりに皆を見渡した。 誰もが笑顔で拍手してくれている。 「皆様、ありがとうございます。本当に驚いてしまって。とても嬉しいです。ありがとうございました」 頭を下げると、感極まって涙が込み上げてきた。 「おやおや、こんな美女を泣かせちゃったよ。俺って罪な男だなあ。あはは!」 マエストロがそう言うと皆も笑い出す。 「さっ!じゃあゲネプロやるぞ。まみちゃんを更に感動させてやろうじゃないの」 「はい!」 マエストロが表情を変えてタクトを構え、スッと振り始めると、圧倒されるような見事な演奏が始まった。
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