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「大河さん、お待たせしました」
終演後。
観客がホールを出た後、ガランとしたロビーで大河が待っていると、後ろから瞳子の声がした。
大きな花束を抱えて笑顔で駆け寄って来る瞳子に、大河は目を細める。
先程まで、まるで自分の手の届かない所に行ってしまったような気持ちで、ステージ上の瞳子を見つめていた。
美しくて、清らかで、高貴で…
手を触れてはいけないような、それでいてどうしようもなく抱きしめたくなるような…
コンサートの間、ずっと大河は瞳子に恋焦がれていた。
その瞳子が、今自分のもとに微笑みながら駆け寄って来てくれる。
それだけで大河は胸がいっぱいになった。
手を伸ばして歩み寄ると、瞳子をギュッと抱きしめる。
「え、あの、大河さん?」
いきなり抱きしめられて、瞳子は戸惑ったように大河を見上げた。
「どうしたの?大河さん」
「瞳子が好きだ」
え…、と瞳子は言葉に詰まる。
「瞳子のことが、好きで好きで堪らない。どうしようもないくらい、瞳子が愛おしい」
瞳子はじっと身を固くしていたかと思うと、おずおずと視線を上げて大河を見つめた。
「私も。大河さんのことが大好きなの」
恥ずかしそうに、はにかみながら小声で呟く瞳子に、大河はまた切なさを募らせる。
「瞳子…」
大河は身を屈めると、大きな花束に隠れるようにして、優しく瞳子にキスをした。
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