尻尾フリフリのトオルちゃん

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「ほーら、よく見ててね。ここはどんな場所かな?」 次の日のモデルルーム。 やって来た多くの家族連れに、営業マンが主にご両親を、そして吾郎と安藤がお子様を担当する。 吾郎が大きなマンションの地図に手をかざすと、パーティールームでの誕生日会の様子が現れた。 『ハッピーバースデー!』 と、賑やかに子ども達がケーキやお菓子を前に楽しんでいる。 「次は、ここにしようかな?」 そう言って吾郎は、カラオケルームに手をかざした。 「え!カラオケ出来るの?」 「そうだよ。マンションの敷地内にあるから、子ども達だけでも楽しめるんだよ」 すごーい!と、子ども達は目を輝かせる。 「ねえ、他には何があるの?」 「んー、じゃあ次はここにしてみる?」 そう言って吾郎が指を差すと、近くにいた女の子が手をかざした。 「え、うそ!プール?!」 「そう。なんとプールまであるんだよ。しかも温水プールだから、冬でも入れるよ」 えー?信じられないー! ほんとのこと?うその話じゃない? と、子ども達は吾郎に詰め寄る。 「嘘じゃないよ。お兄ちゃん、嘘つくように見える?」 「うん、ちょっと」 ガーン…と吾郎はショックを受ける。 「そ、そんな。こんなにも真面目に実直に生きてきたのに。トホホ…」 「ねえ、それはいいからさ。ここは何?」 そう言って子ども達は、思い思いに地図の上に手をかざす。 「そこはね、ドッグランだよ。ペットのワンちゃんを自由に遊ばせられる所」 「そうなんだー。たくさん走ってるね。ねえ、この可愛い子犬、なんて名前なの?」 「え、子犬の名前?そうだなー。トオルちゃん」 トオルー?!と子ども達は一斉に声を上げる。 「ほんとに?」 「うん。うちにいるもん。尻尾フリフリのトオルって子犬が」 「そうなんだ。なんか独特なネーミングだね」 おませな女の子が真顔でそう言い、吾郎は、あはは…と乾いた笑いで、ポリポリと目尻を掻いた。
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