楽しい時間

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「都筑さん!伝票、どこにやっちゃったんですか?」 「ん?トオルちゃんにあげた」 「トオルちゃんに?何を言ってるんですか!あの子は伝票食べないですよ?」 堪らず吾郎は、あはは!と笑い出す。 「大丈夫だよ。食べさせてないから」 安藤がドリンクバーに行っている間にテーブル会計を済ませておいたのだが、そうとは知らない安藤は、必死に伝票を探している。 「お会計なら心配しないで。トオルちゃんがタダ働きにならないように済ませておいたから」 「ええ?!いつの間に?すみません、私がお支払いするはずなのに」 「いいって。俺がトオルちゃんにお小遣いあげたかっただけなんだ」 そう言うと透の顔が頭に浮かんできて、思わず吾郎は苦笑いする。 (あいつにお小遣いはやらんがな) くくっと笑いを堪えていると、安藤が神妙に頭を下げた。 「都筑さん、本当にすみません。別の形で何かお礼を…」 「だから、いいって!楽しいお店に連れて来てくれてありがとう」 「こちらこそ、ありがとうございました」 「うん。ほら、明日も仕事だろ?早く帰ってゆっくり休んで」 「はい、ありがとうございます」 お店を出ると、吾郎はすぐ近くのマンションに入って行く安藤を、姿が見えなくなるまで見送った。
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