営業デビュー

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モデルルームは亜由美の貸し切り状態で、まずは紹介映像から始めた。 「わあっ!このナレーション、瞳子さんでしょ?はあ、癒やされるー」 亜由美は両手を広げてうっとりと目を閉じる。 吾郎は小さく、プッと吹き出した。 (透とおんなじだよ。さすがは似た者夫婦) MRなどのデジタルコンテンツも、一つ一つ感激したように、興奮気味に吾郎にしゃべりかけてくる。 「すごい!なんて素晴らしいの。さすがはアートプラネッツ!日本が世界に誇る技術!私の自慢の旦那様!」 はいはい、と吾郎は聞き流す。 ひとしきりコンテンツを紹介すると、いよいよ商談のテーブルで、安藤は亜由美と向かい合って座った。 「初めまして。内海不動産の安藤 莉沙と申します。よろしくお願いいたします」 丁寧に名刺を差し出す安藤に、亜由美はにっこり笑いかける。 「こちらこそ。莉沙さんはおいくつなんですか?」 「は?わたくしですか?25歳です」 「わあ、私と2つ違い!ちょうどいいですね。マダムプラネッツに入りませんか?」 「は?あの…」 ただでさえ緊張しているところに、意味不明なことを言われて、安藤は固まっている。 吾郎は、ゴホン!と咳払いをしてから亜由美に近づいた。 「亜由美ちゃん、頼むから普通にして」 「えー?普通にしてますよ?私」 「亜由美ちゃんは普通でも、モデルルームに来たお客様としては普通じゃないよ」 「そうなんですかー?変なの」 ガクッと吾郎は首を折る。 「じゃあ、吾郎さんも一緒にいて。ほら、お隣どうぞ」 無邪気にポンポンと椅子を叩く亜由美に、吾郎はしかめっ面になる。 「あの、よろしければ都筑さんもどうぞ」 原口に言われて、吾郎は仕方なく亜由美の隣に座った。
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