トオルちゃんの正体

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「ですからー、トオルちゃん!私、すごーく会いたいんですよー、トオルちゃんに!」 やっぱり始まった…と、吾郎は原口と顔を見合わせる。 お酒はそろそろやめにして…と原口が言った時には既に遅く。 またしても安藤の一人新喜劇が幕を開けた。 「私の所に真っ直ぐに来てくれるトオルちゃん!可愛いおめめで私を見つめて、健気に近寄って来るの。トオルちゃん、私もあなたが大好きよー!」 「ちょっ、安藤!声が大きいって。そんな赤裸々に叫ばなくても…」 どうやら原口は、安藤が恋人の名前を叫んでいると思い込んでいるらしい。 しきりに辺りを気にして、安藤の口をふさごうとする。 「私、トオルちゃんに癒やされたい!トオルちゃんに会いに行きたいの」 「そ、そうか。それならこのあと行けばいいよ」 「トオルちゃんを思い出すと、仕事もがんばれる。だって、トオルちゃんもあんなに一生懸命お仕事がんばってるんだもん。愚痴をこぼしたりせず、嫌な顔一つしないで、いつもニコニコがんばってる。だから私もトオルちゃんみたいにがんばる!」 「う、うん、それは、いいことだな」 「原口さん!どうしてトオルちゃんの所に連れて行ってくれなかったんですか?もしや、私とトオルちゃんを引き裂こうと?」 「ま、まさかそんな!」 「うわーん!トオルちゃんに会いたかったよー!」 そして安藤は、バタッとテーブルに突っ伏して、スーッと寝息を立て始めた。
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