トオルちゃんの正体

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「やれやれ、やっと終わった。皆様、お騒がせしました」 原口が周りの客に会釈すると、皆は微笑んで片手を挙げる。 「都筑さんも、すみません。やっぱり安藤には飲ませちゃいけませんでしたね」 「いえいえ。私はまたしても楽しませてもらいましたよ」 なにせ吾郎の頭の中では、あのロボットワンちゃんがウィーンと動いていたのだから。 「そうですか?そう言っていただけると。それにしてもあの安藤が、こんなに彼氏とラブラブだとは。あ、だから最近コンタクトにしたんですかね?」 「さあ、どうなんでしょうね?」 としか言いようがない。 「でもなんか、ちょっと寂しくなってきました、俺」 原口がポツリと呟く。 「ずっと安藤のことをそばで見てきて、大丈夫かなって毎日心配して…。けど、俺なんかより近くで見守ってくれる恋人がいたんですね。そっか、そうだったのか」 自虐的にフッと笑うと、原口はグラスを一気に煽った。 (原口さん、もしかして彼女のことを…) 好きになったのか? そこまでいかなくとも、気になる存在にはなっているのだろう。 吾郎はそっと横目で原口の様子をうかがう。 (もしそうなら、伝えるべきか?トオルちゃんの正体を) そうすれば、なんだ!と原口は安心するだろう。 だがどうしてか、結局そのあとも吾郎は原口にそれを伝えないままだった。
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