モン・サン・ミッシェル

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サン・マロ湾に浮かぶ孤島、モン・サン・ミッシェルは、708年、司教オベールの夢に大天使ミカエルが現れ、山上に聖堂を建造するよう告げられて建立されたことに始まる。 小さな島全体が修道院として利用され、巡礼の地として広く知れ渡るようになった『孤高の修道院』は、14世紀の百年戦争では難攻不落の城塞として、また18世紀のフランス革命では、監獄として使われたこともあった。 そんなモン・サン・ミッシェルは、潮の満ち引きで大きくその姿が変化する。 満潮時には海に浮かぶ島が水面に鏡のように映し出され、その幻想的な美しさと数奇な歴史から『西洋の驚異』とも称されていた。 大河と瞳子は、観光客で賑わう時間は、メインストリートのグランド・リュでお土産を見たり、名物のオムレツを食べたりしてのんびり過ごす。 島内に1泊することにしたのは、静かな時間帯にモン・サン・ミッシェルをじっくりと巡りたい為だった。 ホテルにチェックインして、窓から潮が満ちる様子をうっとりと眺める。 日帰りツアーの観光客がいなくなると、二人はホテルを出て夕暮れに染まる島を散策した。 「綺麗ね…。空の色がグラデーションで、なんて美しいのかしら」 「そうだな。自然の美しさには敵わない」 刻々と変化する空の色合いを背景に、天空に向かってそびえ立つ修道院。 歴史と自然が織りなす荘厳な風景を、二人は肩を寄せ合って言葉もなく見つめる。 いつの間にか陽は沈み、ほのかにライトアップされた様子もまた、美しかった。
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