お前がいてくれるなら

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お前がいてくれるなら

「うわー、もうこんなに売れたの?」 久しぶりに内海不動産のモデルルームを訪れた吾郎は、壁に貼られた部屋番号の上のバラの数に驚く。 建築工事も目に見えて進んでおり、1つの街がもうじき出来上がろうとしていた。 「はい!販売もついに最終期に入りました」 安藤が嬉しそうに声を弾ませる。 「私が担当させていただいた方も、何組かご成約をいただきまして」 「そうなんだ!がんばってるね」 「都筑さんのお力添えのおかげです。本当にありがとうございます」 「いやいや、俺なんか何も。それより、かなりマンションの工事も進んだようだから、映像やデジタルコンテンツもブラッシュアップしようと思って」 「ええ?!よろしいのですか?」 「もちろん。原口さんと木谷さんにも相談したいんだけど」 「かしこまりました。すぐに呼んで参りますね」 吾郎は、タタッとバックヤードに向かう安藤の後ろ姿を見送る。 (少し会わなかった間に、なんかちょっと雰囲気変わったな) 久しぶりに見る安藤は生き生きとしていて、自信に満ちた明るい表情だった。 (仕事が上手くいってるんだろうな。良かった) 以前は真面目な学級委員のように、常に真顔でカリカリとメモを取っていた安藤が、今は顔を上げてにこやかに話をしてくれる。 眼鏡をやめ、ひとつ結びだった髪型も、後ろでゆるくシニヨンにまとめていた。 (そうするともう前みたいに、酔っ払った一人新喜劇は見せてくれないのかな?) そう思うと、なんだか少し残念な気もする。 またいつか見てみたい、と口元を緩めていると、バックヤードから原口と木谷を連れて安藤が戻って来た。
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