お前がいてくれるなら

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自宅マンションに向かう途中で、吾郎は近所の動物病院に立ち寄った。 事情を話し、怪我の手当てと健康状態を診てもらう。 「あらー、可愛いワンちゃんね。男の子か」 優しそうな女性の獣医はそう言いながら子犬をなでると、顔を上げて吾郎に尋ねた。 「お名前は?」 微笑みながら首を傾げられ、吾郎は、へ?と面食らう。 「あ、はい。都筑 吾郎と申します」 「ゴロウちゃんね。こんにちは、ゴロウちゃん」 そう言って再び子犬の頭をなでる獣医に、吾郎は慌てふためく。 「あ!すみません。吾郎は私の名前でして…」 「まあ、そうだったのね。じゃあこの子のお名前は?」 「えっと…、この子は…、トオルちゃん、です」 「トオルちゃんね。初めまして、トオルちゃん」 すると子犬は、アン!と鳴き声を上げた。 「あら、お返事上手ねー。トオルちゃん」 子犬は嬉しそうにパタパタと尻尾を振る。 「ふふ、元気そうね。では傷の消毒と、体調チェックをしましょうか」 その後、何度も 「いい子ねー、トオルちゃん」 「上手よー、トオルちゃん」 と声をかけられ、子犬は終始ご機嫌で尻尾を振っていた。
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