お前がいてくれるなら

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「ただいまー」 マンションの玄関を開けて声をかけると、リビングから「アン!」と返事が聞こえてきた。 「ただいま、トオル。いい子にしてたか?」 サークルから抱き上げて、頭をワシャワシャとなでる。 トオルは嬉しそうに尻尾を振りながら、吾郎の顔をぺろぺろと舐めた。 「ははは!熱烈歓迎だな。お腹空いただろ。ご飯にするぞ」 ドッグフードを食べるトオルを隣で見守りながら、吾郎はソファの前のローテーブルで牛丼を食べる。 いつもならダイニングテーブルで食事をしていたが、トオルが来てからは、トオルのそばで食べるのが当たり前になっていた。 外食も全くしなくなり、仕事も出来るだけ早く切り上げてマンションに帰る。 「あー、なんか癒やされるな。お前がいてくれるなら彼女はいらないや。な?トオル」 食事のあとに膝の上でトオルをなでていると、トオルもアン!と返事をする。 「俺達、相思相愛だな。やべー、男同士なのにな。あいつの前では絶対に言えないけど、大好きだぞー、トオル!」 「アン!」 「ははは!ほんとに可愛いな、トオル」 「アン!」 寝る時もベッドで一緒に眠る。 もはやトオルのいない生活は考えられない。 ますます恋が遠のいていく気がするが、トオルがいてくれるならそれで構わないと、吾郎は本気で思い始めていた。
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