お前がいてくれるなら

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それから数日後。 吾郎はトオルを連れて内海不動産のモデルルームに来ていた。 映像をブラッシュアップする中で、完成した実際のドッグランで犬を走らせる映像を撮ることにし、トオルにモデルになってもらうことにしたのだった。 「おー、兄ちゃん!この子、こんなに可愛くなったんか」 駐車場に停めた車からトオルを抱いて降ろしていると、先日の工事のおじさんが嬉しそうに近づいて来た。 「そうなんです。すっかり元気になりましたよ」 「そうかそうか。良かったなあ」 トオルも尻尾を振っておじさんの手を舐めている。 「また顔が見られて嬉しいわ。今日は何か用事?」 「はい。ドッグランで遊ばせて、動画の撮影をしようかと。マンションの紹介映像に使うんです」 「へえ、モデルさんか。がんばれよ」 「アン!」 元気に返事をするトオルに目を細めて、おじさんは、またな!と去って行く。 ドッグランに着くと、「都筑さん!」と声がして、安藤が駆け寄って来た。 「今日はわざわざありがとうございます」 「こちらこそ。撮影に立ち会ってくれてありがとう」 「いいえ。わあー、この子がトオルちゃんですね。初めまして!安藤 莉沙です」 トオルは、アン!と返事をして安藤の方に身を乗り出す。 吾郎が近づけると、トオルはぴょんと安藤の腕に飛び移った。 「ひゃー、可愛い!ふふっ、とってもいい子ですね」 にっこり微笑む安藤の顔を、トオルはぺろぺろと勢いよく舐める。 「あはは!元気ねー。つぶらなおめめにふわふわの身体!とっても可愛い」 トオルは吾郎の存在を忘れたように、安藤にべったりになる。 そんなトオルになんだか寂しさを覚えた吾郎は、いかんいかん!と頭を振る。 (どんだけトオルにぞっこんなんだよ、俺) 気を取り直して、早速撮影に入った。 「ほーら!トオルちゃん。こっちよー!」 「アンアン!」 「あはは!速い速い!すごいわね、トオルちゃん」 安藤とトオルは、まるでラブラブなカップルのように抱き合って微笑む。 (なんだろう、なんなんだ?この感覚は) もう充分撮影出来たというのに、吾郎はもやもやしたままカメラを回し続けていた。 安藤に駆け寄るトオルの生き生きした表情と、トオルに飛びつかれて笑顔を弾けさせる安藤。 そのどちらからも、吾郎は目を逸らせずにいた。
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