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 ところで。  朝日が新しく働くことになった『結び相談所』であるが、これは、政府の少子化対策で打ち出された新たな法案に乗っかるようにして出来た結婚相談所だった。  それまで、無能な日本政府はやれ子育て支援事業だ働き方改革だと様々な事をやってみたものの、結局、出生率が1.0を切るという現実を前にして、政府はそれまでの政策の誤りを認める決断を、ようやく下すに至った。 (マッチングアプリを利用する自治体もあったが、実際のところこちらも出生率向上とは成らなかったのだ)  政府は新たに『国民人口と交易福祉倍増計画』という法案を通し、これを国会で成立させた。  次に政府が最初に手を付けたのは、圧倒的な財源不足を画期的な方法で補填することだった。  日本には、経済的な理由等で、親元で養育が出来ない子供が約50000人いるが、その約80%が乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしている。  ここでの措置費は国庫負担金によって支払われるのだが、毎年かなりの負担を国が負っていたのが事実であり、政府はこれを削減することに着目したのだ。  とはいえ、いきなり措置費を削るような荒っぽい方法に出た訳ではない。 (そんな事をしたら、世論がさすがに黙っていないだろう)  政府が始めたのは、LGBTなどのカップルにも広く親権を認め、養子縁組を国として積極的に斡旋するというものだった。  同時に、それまでは人権問題として禁止してきた、金銭の授受を伴う親権の交渉も解禁したのだ。  これにより、措置費は政府の狙い通り大幅に改善されることになった。  だが、これだけではまだ不十分だ。  根本的に婚姻率を上げなければならない。  その為に、政府は『結婚』の届けが出された場合は、成婚料として一律200万、出産(または養子)を迎えた場合は一人につき300万円を、国から祝い金として支給される法律を作った。
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