3

2/14
前へ
/105ページ
次へ
 画期的過ぎるこの政策は見事的中し、劇的に出生率も改善した。  金銭を伴う親権の譲渡は人身売買に当たると、国際的にも厳しく批判されることになったのだが、超現実的な法案は功を奏し、日本国民の人口は一億人を割り込むだろうと算出された過去の予測を覆して大きく回復している。  そして、同性間の婚姻関係も“パートナーシップ制度”という曖昧なものではなく、法改正して正式な婚姻だと認められるに至った。  2000年代に入ってからは結婚するカップル自体がどんどん下降線を辿っていたのだが、政府の狙いはズバリ的中し、法改正により結婚するカップルもV字回復している。  これに伴い、異性同性問わず結婚をした業者にも、国から報奨金が支給されることになったワケだ。  つまり現在の結婚相談所は、上手く行けばカップルから成婚料を頂き、国からも報奨金が支給されるというWの旨味が発生する事になったのだ。  それが、須藤黒闇率いる『結び相談所』が、攻めの姿勢で婚活パーティーを開催する理由であろう。    ◇  朝日は手にグラスを持ちながら、出来るだけさり気なく会場内の様子を窺っていた。  反対側では、恭介も同じように会場内の様子に目を配っている。 『お前ら、俺の指示通りに動けよ』  事前にそう須藤と宇野に申し渡され、インカムから流れる指示を聞き逃さぬよう全神経を集中させている次第だ。  今日開催されたトクアンの婚活パーティーは、ゲイ限定の婚活パーティーだという。  あの後知ったのだが、ネコとは『女役』という意味であり、タチはその逆の『男役』だという話だ。  極端に好みが限定されている事もあり、このような婚活パーティーに参加する場合は通常料金に加え特別料金が発生するそうだ。 (……いくら面子が足りないっていっても、これは詐欺じゃないかな)  朝日は、【あさひ・23歳・ネコ希望です💖】という胸に付けた名札に視線を落とし、溜め息をついた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加