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(だいたい、僕は23歳じゃないし)
年齢詐称で、すでにヤバい気がする。
それに、別に恋人を探しているわけでもない朝日は、周囲のガチの雰囲気に、既に気圧され気味だ。
負い目がある所為か、自然と動作もぎこちなくなって下を向いてばかりになる朝日に、インカムから指令が飛ぶ。
『朝日! ちゃんと会場を見ろ!』
「は、はい……」
『①番と⑤番が話したそうにしているじゃないか。さり気なく近寄って行って、仲を取り持ってやれ』
宇野の指令に、だが朝日は訝し気に眉を寄せた。
「ですが、①も⑤も最初のアンケートでは互いにチェックを入れてませんよ。むしろ、⑦番の参加者と①番はファーストインプレッションで互いにチェックを入れているし、こっちをプッシュした方が良いんじゃないんですか?」
すると、インカムから違う声が流れた。
『第一印象通り結ばれたカップルなんて、ほとんどいないんだ』
(えっ!? 社長?)
『むしろこちら側で、それぞれの相性を吟味して仲介してやった方が成婚率は格段に上だ。お節介を焼いてやるのが、オレらの仕事だと思え』
須藤の言葉には、説得力があった。
そして、朝日や恭介がただのサクラとして婚活パーティーに参加させられた訳では無かったことに、今更ながらホッと胸を撫で下ろす。
「分かりました。元営業の底力を見せてやりますっ」
意を決し、一歩踏み出そうとした朝日であったが。
「……ねぇねぇ。さっきから見てたんだけど、向こうの⑤番の彼が、君の事をずいぶんと気にしているみたいだよ。ちょっとそのグラスを持って一緒に行ってみない?」
なんと、朝日が行動に出ようとした鼻先で、恭介が先行して①番に話しかけたのだ。
“出遅れた”
そう悟った朝日であったが、時すでに遅く。
恭介が鮮やかに、朝日のターゲットだった①番を連れ去ってしまった。
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