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『いや、お前はそのまま⑧番を連れて⑪の所へ行け』
「え!? 良いんですか?」
『ああ。それから、お前はもっと自信を持って行動しろ。どうしても上手く行かないようだったら、俺か宇野が司会役でその場に介入するつもりだ。だから、安心しろ』
成程。
今回の婚活パーティーは、朝日と恭介を鍛える意味もあったようだ。
(道理で! いきなり婚活に参加させられるなんて不可解だと思ったんだよ。やっぱり須藤社長はちゃんと考えてたんだな)
荒療治だが、現場の空気を感じ取る為には、実際に自分も体験するのが一番だという事か。
納得した朝日は、それならばと、培った営業スマイルを浮かべて⑧番のきよしに向き直った。
「きよしさん、気後れする気持ちは分かりますが、せっかく高い参加料を払ったんだし、ダメもとであそこに行ってみましょうよ」
『高い参加料』『ダメもとで』のワードに反応したか、きよしはモジモジしながらも一歩踏み出した。
朝日はさり気なくリードするようにその半歩前を歩き、⑪番の元へと、きよしを伴って接近する。
「?」
こちらに気付いたらしい⑪番と取り巻き連中が、パッと視線を向けて来た。
足を止めそうになるきよしの緊張を解すように、朝日は率先して笑顔を浮かべる。
「こんにちは! こっちは何だか賑やかですね。僕達ともお話ししませんか?」
これだけ朗らかに声を掛けられては、相手も朝日達を邪険には出来ない。
一団は戸惑いながらも、口々に自己紹介を始めた。
その中には、きよしの希望するような“華奢で綺麗なタチ役”が、意外にも一人だけ混ざっていた。
「……じゃあ、次は俺だね。⑨番カオル。歳は22だよ。この参加者の中では最年少じゃないかな」
「そうなんだ! 22! 何でその若さで婚活を?」
「法律上は同性婚も解禁になったけど、やっぱこういう趣味だし、早い内からパートナーを探しておきたくてね。でも、君も23じゃないか。君こそ、どうして?」
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