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 そう思うと、どんどん気分が落ち込んできた。  だが、こんなマイナス思考ではダメだと奮起する。 (そうだよ、恭介のことを非難するなんてどうかしている。あれは本当にタイミングが悪かっただけさ。第一、今日はせっかく新人歓迎会を開いてくれたっていうのに、当の本人がこんな暗い顔していたら空気が悪くなっちゃうよ)  朝日は自らに発破をかけると、培ってきた営業スマイルを浮かべながら、朗らかに輪の中へと入って行った。  そんな朝日と、他の社員たちもグラスを手にしながら気さくに会話を始めるが。  しかし、一人須藤だけは神妙な面持ちになって、ジッと朝日を見つめていた。    ◇ 「社長って、絶対朝日の事が好きだよな」  トイレを済ませ、手を洗っている時だった。  あとから入ってきた恭介が突然そう言い出し、朝日は驚いて蛇口から流れる水を飛び散らせる。 「わっ! えぇ!?」 「ちょっと! こっちにまで跳ねて来たんだけど!」 「ご、ごごごめん……で、何だって?」 「須藤社長だよ。朝日ばっかり贔屓してるじゃないか。あれ、絶対朝日の事が気に入っている証拠だよな」 「それは無いと思うけど……」  何故だか冷たい言い方をする恭介の迫力に押され、朝日はしどろもどろに言い返す。  だが、恭介は朝日の言い分など歯牙にも掛けぬ様子でハッと笑った。 「誰がどう見てもそうだよ。最初から朝日には気安い感じで喋っていたし、婚活パーティーでは助け舟を出そうとするし。好きな相手じゃなかったら絶対そんな事はしないさ」  断定的な言い方に、さすがの朝日もムッとする。 「そんなの、恭介の思い込みだ。第一、社長は僕の顔を見て『面白い顔』って言って笑ったんだぞ? それのどこに好意があるって言うんだ」  すると恭介は、訝し気な様子になってしげしげと朝日の顔を眺めた。
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