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「おう、残業ご苦労だな。ところでお前にも、来月から担当を請け負ってもらう事になったから、そのつもりでいろよ」
事務所に一人だけ残って書類制作をしていたところ、何気なく現れた須藤に突然肩をポンと叩かれて、そう言い渡された。
その言葉に、朝日は身が引き締まる思いがして、ブルっと武者震いをする。
(いよいよか!)
結び相談所へ転職してそろそろ二か月だ。
ここでは、社員の一人ひとりが会員の担当となり、マッチングする相手を捜したり紹介したり、時にはデートの橋渡しと、会員同士で成婚に至るよう微に入り細を穿つようなフォローをする事になっている。
ベテランの宇野などは二十人以上の担当を請け負っているというから驚きだが、他の社員も大体五人前後は担当しているらしい。
「でも、僕にも出来るかな……」
緊張する朝日に、須藤はニッと笑った。
「大丈夫だ。トクアンの婚活パーティーでは上手く立ち回っていたじゃねーか。ああいう風に、相手の話をよく聞いて一番幸せになれるだろう方向に導いてやれば良いだけの事だ」
「でもあれは、社長の助言があったから上手く行った訳で」
しどろもどろになる朝日に、須藤は「何だ、嫌なのか?」と問い掛ける。
これに対し、朝日はブンブンと首を振った。
「いえ、嫌じゃないです。きよしさんとカオルさんの幸せそうな顔を見た時は僕も超嬉しかったし、メチャクチャ達成感もありましたから。人同士の縁を結ぶというこの仕事は、本当に遣り甲斐のある仕事だと思えて感動したくらいです。前の会社では営業もそれなりに楽しかったですが、僕はこっちの仕事の方が好きだと思えました」
素直な感想に、須藤は少し照れたように口元を緩めた。
「そう言ってもらえると、社長としては嬉しいな」
「あはは、そうですか?」
「……だったら、担当になる事はOKでいいんだな?」
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