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強引な論法に、朝日はどう言い返そうかと考えようとするが。
その隙を突いたように、再び須藤がキスを仕掛けた来た。
ただし今度は、覆い被さるように身を乗り出し、しかも上からガッチリと朝日の両肩を掴んだ状態で、である。
未だ着席した状態の朝日には、逃れる術はない。
「んぅ~って、社長! 冗談はもう止めてください!」
上体を拘束されたような格好なので、どうにか顔を背けてキスから逃れる朝日だ。
さすがに怒りが湧いてきたので、上目遣いに須藤を睨んで口を開く。
「いくら何でも、こんなのやり過ぎだ! 本当にセクハラで訴えますよっ」
そう、警告を発するが。
だが、須藤の方は暖簾に腕押しとばかりに更に覆い被さってきた。
「しゃ、社長――! 僕の話を聞いてます?」
「ん? 聞いてるぞ」
「だいたい僕は、社長の好きなタイプでは無い筈じゃ!?」
「俺がいつ、そんな事を言った?」
「だ、だって、ヒッ! 首を舐めるな――っ!」
必死にジタバタしながら、朝日は言い繕う。
「僕の顔を見て『面白い顔』って言ったじゃないですか! つまり、社長から見たら僕は不細工って事でしょう!」
「何だ、そんな事か」
須藤はそう呟くと、ちょっとだけ上体を戻し、超至近距離から朝日の顔を見つめる。
真剣なその眼差しに、何故だかドキッとしながら、朝日は次の言葉を待つ。
だが、次に告げられたセリフには、呆気にとられる事となった。
「お前の顔は、俺が昔飼っていた犬に似てるんだよ。人間なのに犬と顔が似てるって面白いと思った、その感想がポロッと口から出たんだな」
「い、犬――!?」
まさかこの顔面が、犬似と言われるとは思いもしなかった。
しかし、これで面白い顔と言われた謎は解けた。
これにて全て解決……とは行かなくて。
「だから、首は舐めるなって言ってるじゃ――ひぃぃ!」
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