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 ペロリとを舐められ、朝日の全身に震えが走った。 「社長っ! いい加減にしないと本当に怒りますよ!」  強い声を上げて椅子から立ち上がろうとするものの、須藤とでは元々の体格差もあり、力では到底敵わない。  しかし、どうにかしてこのホールド状態から脱出しようとジタバタ足掻く朝日だったが。  両肩を掴んでいる腕の力に反し、子犬のようにペロペロと優しく耳たぶを舐めて来る須藤に、朝日は言いようのない感覚を覚えた。  それは“悪寒”ではなく、初めての“快感”だと。  次第に熱くなってくる体の反応に、朝日は自分でも戸惑う。 「……あ、あの、もう暴れませんから、肩の手を放してもらえませんか? さすがに痛いっす……」  抵抗を止めてそう訴えたところ、須藤は「本当か?」と念押しするように訊いてきた。  それに対し、朝日は溜め息をつきながら頷く。 「嘘じゃないです。なんか、この状況で抵抗するのって馬鹿らしい気がしてきたし」  すると、万力のような力で朝日の肩を押さえ付けていた手からは、徐々に力が抜けていった。  見上げると、何故だか叱られた犬のようにしょんぼりとした顔の須藤が目に映った。 「怒ってないか?」  こうも直球で訊かれると、却って本音を言い辛い。  朝日は苦笑いを浮かべると、首を振っていた。 「怒ってませんよ。それにしても、何で突然キスをしたんですか?」 「せっかく二人きりになったんだぞ。これは手を出す千載一遇のチャンスだろうが」 「チャンスって……」  意外な事を言われて、朝日は面食らうが。  考えてみれば、出会ってからこの二か月、二人きりのシチュエーションになったのはこれが初めてだったことに思い至った。  会社では常に周囲に人がいたし、デスクワークがメインになった事もあり、上司と連れ立って外回りという事もほとんど無くなった。  そして。  仕事が終わったら直行で帰り、ビールを飲むのが何よりの楽しみだった朝日は『おひとり様』生活を満喫していたので、常日頃から煩わしい飲みの誘いは断るようにしていた。
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