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「どうしますか、須藤さん。ミツバの野郎、逃げやがって……」
「この事務所には何も無いようです。どうでもいいサプリしかありません」
男たちの報告に、頬に傷のある男は「まぁ、事業譲渡契約書を先に制作しておいたからいいけどよ……しかし、ミツバも最後くらいツラを見せろってんだよな」と舌打ちをする。
『ミツバ』のワードに、朝日は首を傾げる。
(ミツバって、光原社長の事かな? 逃げるって、何だろう? もしかして光原社長は、ヤクザから借金でもして追われているのかな?)
朝日が知る光原社長は、紳士を絵に描いたような男性だった。
光原は月に三日ほどしか出社しないが、かなり裕福そうな様子なので、きっとこの会社以外にも何か経営しているんだろうと思っていたが。
まさかその社長が、借金を!?
「あ、あの! あなた達は、借金取りなんですか!?」
朝日の質問に男たちは一瞬フリーズした後、弾かれたように笑った。
「ハハハハ! 借金取りか! それは面白い発想だな」
「え……違うんですか?」
すると、傷のある男は「違うちがう」と笑いながら答えた。
「俺は借金取りじゃない」
「で、では、いったい本日はどのようなご用件で?」
「今日からこの『ビューティー探求房』は、看板を替えて『結び相談所』になる。今日はその通告の為に来たんだ」
男が言ったセリフを脳内でリピートすると、朝日はますます混乱した。
つまり、何だ?
会社の経営者が変わって、別会社に生まれ変わるという事で合っているのか?
それにしても、結び相談所とはなんであろう……とは思うが。
「あの、でも、そんな急に――そ、それに、僕はそんな話は初耳なんですが!」
「そうなのか?」
「そ、そうですよ! 急にこんな事を言われても困りますっ」
だが男は、まじまじと朝日を見つめると次に破顔した。
「ハハハハ! お前、面白い顔してるな」
「は、はぁ?」
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