最終章

14/15
前へ
/105ページ
次へ
「ドキドキって……あははっ」  限りなくガキのような事を言うが、それが須藤黒闇という男なのだ。  今は、ようやくそれを理解した。  顔は、確かに涅槃と似ているかもしれないが、その中身は全く違う。  純粋で無邪気で優しくて、乙女のような夢を見る頼もしい漢だ。 (そう考えると、この人ってば、めちゃくちゃ可愛い人じゃないか)  朝日の中で芽生えていた恋心が、一層花開くのを感じる。  そこでふと、思い至った。 「そういえば須藤さんは、その、結婚式はどうするつもりですか?」  同性の結婚もそうだが、きちんと結婚式まで挙げるケースも、今はメジャーになった。  きよしとカオルも、将来は式を挙げる事まで考えているようだし……だが、籍だけ入れてそれで済ますカップルも今は多い。  しかし、根が乙女な須藤はしっかりと考えていたようだ。 「もちろん、大勢呼んで盛大な式を挙げようぜ」 「いえ、それなら……本当に近しい人だけの方が、僕はいいかな……」  朝日がそう希望を口にしたところ、須藤は即座に頷いた。 「分かった。俺の方は宇野と、上の兄貴達だけ呼ぶことにしよう」 「兄貴達? 須藤さんには上にお兄さんがいるんですか? ご両親は?」 「まぁ、呼んだら来るとは思うが……ずっとブラジルにいるからなぁ……」 「ブラジル!?」 「ああ。日系三世で日本オタクの両親だ。日本語が話せないクセに、黒闇だの涅槃だの、意味も知らずにだけ見て子供に名前を付けた、最高に痛いクレイジーな親だ」 「……お兄さん達のお名前は?」 「羅刹と修羅」 「……須藤さん、黒闇でまだ(?)良かったですね」  思わずそう呟いた朝日に、須藤は苦笑を漏らした。 「ああ、俺もそう思う」  クシャッと顔を歪めて笑う須藤は、本当に可愛いと思える。  もう、こんな男、愛さずにはいられない! 「須藤さん、僕と結婚してください」
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加