ふんばれ、シューズ!

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 その日、ホワイトシューズは久しぶりに、涼くんとともにグランドの土を踏みました。 「おお、無事であったな」  サッカーボールがほほえみながら、そこにいます。ヒダリはサッカーボールをにらみつけました。 「おまえ、オレを裏切っただろ」 「え?」  サッカーボールはキョトンとしながらこう言います。 「なにを言う。コロの小屋から脱出できたのは、このわが輩のおかげであるぞ」 「助けてくれたのは、涼だ」 「だから、それは、わが輩のおかげだ」 「うそつけ。おまえはシューズを盗むように、コロをそそのかしただけじゃないか」 「それが、わが輩の作戦だ」 「そんな作戦、あるもんか」 「よいか、よく聞け。涼くんのシューズは、ホワイトとブルーの二足だけ。どちらも片方消えてしまえば、履くシューズがなくなって、サッカーができないではないか」 「あっ」 たしかに、小屋まで助けに来た涼くんの足、今朝はサンダルが……。 「そうなれば、涼くんは、シューズを必ず探すであろう」 「ああ、そういうことだったのか! ありがとう、サッカーボール! おまえは、オレのヒーローだ!」  涼くんの体重がヒダリにギュッとかかります。次の瞬間、サッカーボールは空に向かって、高く飛んで行きました。    おわり
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加