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その日、ホワイトシューズは久しぶりに、涼くんとともにグランドの土を踏みました。
「おお、無事であったな」
サッカーボールがほほえみながら、そこにいます。ヒダリはサッカーボールをにらみつけました。
「おまえ、オレを裏切っただろ」
「え?」
サッカーボールはキョトンとしながらこう言います。
「なにを言う。コロの小屋から脱出できたのは、このわが輩のおかげであるぞ」
「助けてくれたのは、涼だ」
「だから、それは、わが輩のおかげだ」
「うそつけ。おまえはシューズを盗むように、コロをそそのかしただけじゃないか」
「それが、わが輩の作戦だ」
「そんな作戦、あるもんか」
「よいか、よく聞け。涼くんのシューズは、ホワイトとブルーの二足だけ。どちらも片方消えてしまえば、履くシューズがなくなって、サッカーができないではないか」
「あっ」
たしかに、小屋まで助けに来た涼くんの足、今朝はサンダルが……。
「そうなれば、涼くんは、シューズを必ず探すであろう」
「ああ、そういうことだったのか! ありがとう、サッカーボール! おまえは、オレのヒーローだ!」
涼くんの体重がヒダリにギュッとかかります。次の瞬間、サッカーボールは空に向かって、高く飛んで行きました。
おわり
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