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「いってきま~す」
3年生の涼くんは、今日もブルーシューズを履いて学校へ向かいました。
玄関には、ホワイトシューズが残っています。サイズは22センチ。ホワイトシューズのヒダリがミギに声をかけました。
「おい、今の青びょうたんのえらそうな目を見たか?」
シューズのどこに目があるかはわかりませんが、涼くんに選ばれて出かけるブルーシューズが、ホワイトシューズのヒダリには、なまいきそうに見えたようです。
「青びょうたんって、ブルーシューズくんのこと? 涼くんに選ばれて、うれしそうにしていたね」
ホワイトシューズのミギは、ブルーシューズのことが、それほど気にならないみたいです。
「なにのんきなこと言ってるんだ。このままだとオレたち、涼に忘れられて、捨てられちまうぞ」
「そうだね。キミは忘れられちゃうかもね。でも、ボクは活躍してるから、大丈夫」
サッカーが得意な涼くんの右足は、ズバリとシュートを決めるので、ミギはそのたびにヒーロー気分を味わっていました。
「いい気なもんだ。こっちは、踏みしめられて、痛くて、臭くて、すり減って、おまけに忘れられちゃって、もう、やってらんないよ」
ヒダリが「フン」と鼻を鳴らしたとき、開けっ放しになっていた扉から、薄茶色の生き物が入って来ました。涼くんが飼っている柴犬のコロです。
コロは涼くんのにおいが大好きで、玄関に来てはシューズのにおいをかぎまくります。まずは、ミギ。そしてヒダリ。
「いいかげんにしろ」
機嫌の悪いヒダリは、コロをにらみつけました。コロは、ちらりとヒダリに目をやると、パクリとくわえて走り出しました。
「はなせ、なにするんだ!」
ヒダリが叫びます。けれども、コロはどこ吹く風です。庭を横切り、ヒダリを自分の小屋まで運ぶと、ベロベロとなめはじめました。
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