ふんばれ、シューズ!

1/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「いってきま~す」 3年生の涼くんは、今日もブルーシューズを履いて学校へ向かいました。  玄関には、ホワイトシューズが残っています。サイズは22センチ。ホワイトシューズのヒダリがミギに声をかけました。 「おい、今の青びょうたんのえらそうな目を見たか?」  シューズのどこに目があるかはわかりませんが、涼くんに選ばれて出かけるブルーシューズが、ホワイトシューズのヒダリには、なまいきそうに見えたようです。 「青びょうたんって、ブルーシューズくんのこと? 涼くんに選ばれて、うれしそうにしていたね」  ホワイトシューズのミギは、ブルーシューズのことが、それほど気にならないみたいです。 「なにのんきなこと言ってるんだ。このままだとオレたち、涼に忘れられて、捨てられちまうぞ」 「そうだね。キミは忘れられちゃうかもね。でも、ボクは活躍してるから、大丈夫」  サッカーが得意な涼くんの右足は、ズバリとシュートを決めるので、ミギはそのたびにヒーロー気分を味わっていました。 「いい気なもんだ。こっちは、踏みしめられて、痛くて、臭くて、すり減って、おまけに忘れられちゃって、もう、やってらんないよ」  ヒダリが「フン」と鼻を鳴らしたとき、開けっ放しになっていた扉から、薄茶色の生き物が入って来ました。涼くんが飼っている柴犬のコロです。  コロは涼くんのにおいが大好きで、玄関に来てはシューズのにおいをかぎまくります。まずは、ミギ。そしてヒダリ。 「いいかげんにしろ」  機嫌の悪いヒダリは、コロをにらみつけました。コロは、ちらりとヒダリに目をやると、パクリとくわえて走り出しました。 「はなせ、なにするんだ!」  ヒダリが叫びます。けれども、コロはどこ吹く風です。庭を横切り、ヒダリを自分の小屋まで運ぶと、ベロベロとなめはじめました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!