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「アオウミ社の倉庫、オウハラ商事、あとはミチベニ工業に……」
仕事が少し増えてきたシロヤマの事務所に客の姿があった。
古いソファに腰掛ける客は、質の良いスーツを着た中年の男。こちらは付け髭ではない自前の口髭を蓄えており、若干ではあるが額が広い。
客は、向かい合って座っているシロヤマがぽつりぽつりと口に出す名をウンウンと肯きながら聞いていた。
「それから……」
指を折りたたみ、シロヤマが語るのは爆発事件の現場となった場所だ。
片手の指を全てたたみ終えて、シロヤマが客を見る。
「直近の、アカヤ氏経営の大型商店」
客が答えて、シロヤマはうんと頷いた。
「これってやっぱり、この一連の騒動の被害者、十三年前の事故で生き残った方々ですよね。しかも、あの事故から急に成長……もとい、法に触れるギリギリで私腹を肥やしていると影で言われていたところばかり。……今回の事件の後で業績にも悪影響がでてるとか?」
「うん。オウハラは倒産寸前にまでなっているな。従業員の違法な扱いが表沙汰になったとか、扱う品の偽造があったとか、経営者がいかがわしい組織と関係があったとか。……他も探れば似た様なものだったが。ああそう。確かに全員十三年前の事故の生き残りだ」
「そこまで洗えていて、警察側で捜査が進まないのは何故ですか。兄さん」
シロヤマに兄と呼ばれた客は、言われて気まずそうに口髭をひとつ撫でた。
兄というからには四人いる兄のうちの誰かだろう。歳が離れているように見えるところからして、家を継いだ長兄の下、二人目の兄だろうか。
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