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親指と人差し指を立てて二件と強調するシロヤマに、警察の兄がなぜと問いかけた。 「なぜその二者なんだ」  件の事件の生き残りは数人該当する。その中で私腹を肥やしている者は二つでは済まないはずだ。どうして二件に絞れるのか。その問いにシロヤマはすんなりと答える。 「十三年前の事件の被害を拡大させたのが、この連続爆発事件の被害者たちだからです。ハイヌマとロクセンも、その中に含まれているんですよ」 「どういう意味だ? 彼らはあの事件の共犯だったとでも?」 「いえ、共犯ではありません。強いて言うなら、便乗犯、ってところでしょうか」  あの日、溢れる人の群れの中でシロヤマは耳にした。  他人の話を聞いているようでいて聞いていない、己の話ばかりをしたがる欲の塊どもの中で、腐敗臭が漂う笑い声を。 「今日のこの船は狙われている。どこの誰かはわからないが酷い恨みを買ったらしい。船ごと爆破してそいつを殺してしまおうという話だ。……犯人は逃げ道を確保しているから巻き込まれても逃げられるが。でも――」  それを利用しない手はないよな。  彼らは先に犯人達の動きを掴み、掴んでいてもそのまま泳がせた。訴えることもなく、懐にかくまうでもなく、犯人が犯行に及ぶまでに障害になり得るものを密かに影で排除しながら。  犯人の動きに覆い被せるようにして、彼らは自分たちの退路を確実に確保しつつ、犯人の用意した爆発物よりさらに強めの爆弾を仕込んだのだ。  他人に罪を着せ、己が得られたはずの富を横から吸い取る仕事敵を葬るために。
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