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「お互い保身に必死みたいだね、ほら。話が全然進んでない。これは長引きそうだ」  シロヤマは笑いながら今朝買ったばかりの朝刊を広げて見せた。  そこには、連日のようにタマノクラで名を馳せる富豪らの名前が連なり、そして彼らと警察の不祥事を伝える文字列が並んでいる。  街の中もここ数日は富豪と警察の癒着の話と、劇場の破壊以降身を潜めた爆発事件の犯人を義賊のように語る噂話で持ちきりだ。    その噂の隙間。真実の吹きだまり。  古びた応接セットがどかんと居座る狭い部屋。   「あの投書したの、お前だろ?」  ため息混ざりの呆れたような声が、広げられた新聞の上に落ちた。
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