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「今の状況の警察にきみを突き出したところで証拠不十分で釈放されるのがオチさ。それに、警察や金持ちの腐敗を暴いたあの事件の犯人を捕まえるのは、今の警察側にとって不利になる。今きみは世間じゃ英雄同然なんだぜ? そこに泥塗ってみなよ、警察への信頼はさらに地に落ちる。表向きは探しているなんて言うけど、それより内部のゴタゴタを片付けるのが優先されるだろうしね。――ってことで、ぼくがずーっと黙ってたら、きみは捕まることは無いよ」 「お前っ、……流石にそれはまずいだろ」  咎めれば、シロヤマはうんと肯いてみせた。わかって言ってるならなおさら悪い。  でも。とシロヤマは言った。 「彼らが彼らの本分を全うして真剣に細かく調べることができていたなら、きみを犯人として探り当てるのは簡単にできることだったよ。……僕が一晩でできたんだから」  でも彼らには出来なかった。それだけ彼らの組織が、いや、この街自体が広く腐っているからだ。僕はそう思うんだよ。 「僕はせめて警察が正常に動けるようになるまでこの街で探偵業を続けて、明らかにならない隠された悪事を暴いて行きたいんだよ。……関係無い人が巻き込まれて不幸になるのは、きみも嫌だろう?」  僕が言うと、彼は深く息を吐いて言う。 「……その助手業は、ちゃんと給料出るんだろうな」  火傷の痕が残る腕を伸ばされて、俺はその手を強く握った。  僕は真剣なその目に答えて、うんと返す。嬉しさが半分以上混ざっていたから、彼は照れくさそうにしていたけれど。
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