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 シロヤマが経験した事件というのは、ある豪華客船の爆破事件だ。三百を超える犠牲者を出し、海に放り出されたまま遺体も見つけられず未だ行方不明の扱いのままの者もいるという大事件だった。  あれは、そう、約十三年。正確に数えるならば十二年と半年と二日。  栄える街タマノクラには、国中から、我こそは富豪である、と名乗りを上げる男女が勢揃いしていた。  年寄りから子供まで、端から端まで数えれば千を超える人の数があった。  政治の話か商談、あるいは腹の探り合いか、政略的な縁談などもあったかもしれない。  均せばただの権力財力自慢の場だ。  贅をこらした衣装に装飾品を身につけた、どこか脂ぎってさえ見える人々が集い、下品な笑いと話題を繰り広げ、豪勢に盛り付けられた異国の酒や料理をマナーもそっちのけで口に運ぶ光景が繰り広げられていたのは、当時最新かつ国内最大と歌われた豪華客船の中。
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