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「死神のくせに堅物すぎやしませんか。死神っていったら悪いことしてなんぼじゃないですか」
「勝手なイメージを膨らませないでいただきたい」
「だって、毎日人を殺して回ってるわけでしょ。悪いなあ、いやあ、とんてもない極悪人だ」
「失敬なっ。わたしたちは、死んだ方々を黄泉に送るだけの、ただの案内人に過ぎないんです。勝手にぽっくりいってしまったあなたに、どうこう言われたくありませんね」
「……酷い。死者に鞭打つとはまさにこのことですね」
「いや、そういうつもりでは」
わたしがわざと泣き真似をしてみせると、彼はオロオロしだした。思った通り、彼ならうまく言いくるめられそうだ。
「そもそも、わたしは死神ではありません。神に仕える、れっきとした天界の使者なのです。あなたの悲しみはよくわかるつもりです」
「……ということは、あなたは天使?」
「天界の使い、という意味では、そう呼べなくもないでしょう」
「では、是非、神のご慈悲を賜りたいな」
「……この度は突然のことでお悔やみ申し上げます」
「うわべだけの言葉が欲しいわけじゃないんですよ」
「わたしにどうしろと」
いちいち真面目に返答してくるので、少し楽しくなってしまう。かなりお人好しの天使と見た。
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