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「天使さんならわかるでしょう? わたしの望みが」
天界のしきたりがどうなっているのかは知らないが、ここは文字通りの、生きるか死ぬかの瀬戸際。どんな手を使ってもこの世にしがみついてやるつもりだ。
「わたしはね、どうしても死ねない理由があるんですよ」
「そう言われましても、既にあなたの肉体は内臓破裂に両足骨折、頭部挫傷で即死ですよ。それはもう、目を覆いたくなる状態です。今は配慮して目隠ししていますが、ご覧になりますか」
「……いや、結構です」
わたしはきっと、トラックと正面衝突したのだろう。痛みこそ感じることはなかったが、ちょっとショックだ。
「心中、お察しします。また転生して新たな人生を歩まれるといいでしょう」
「……待ってください。わたしは今日まで特に悪事も働かず、それなりに周りに気を遣って生きてきたつもりです。なんとかなりませんか」
「何度も申し上げていますが、無理な話です。運命というものは必ずしも平等ではない」
灰色天使は頑なに首を横に振る。だが、この程度で諦めるつもりはない。数々の値下げ交渉に勝利してきたわたしの粘りを見せてやろう。
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