これから

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 あれから毎日キスやプラスアルファのスキンシップを重ね、私の寿命は順調に伸びているらしい。 「これってどのくらい正確ですか」  図書室にあった大陸の地図を広げてみた。  村とこの家周辺しか知らない私は、今世で海を見たことがない。  外国はどの程度離れているかも分からない。  しかしその地図には確かに広い海と、そこに点在する島々が描かれていた。 「懐かしい。昔村に来た旅人からもらったんです。私もここから移動したことがないから、今も同じか分からないですね」 「ちなみにそれって」 「何百年か前ですね」 「……今は名前が違う町や港があるかもしれませんね」  他の地域や国にはどんな暮らしがあるんだろう。 「行ってみます?」 「良いんですか?」 「チリがいつ転生するか分からずここに留まっていただけで、この場所自体に未練はありません」 「旅ができるってことですよね? しかもフェリスと!」 「そんなに喜んでくれるなら、すぐにでも行きましょう」  嬉しい。転生してもロクなことがないと嘆いていた頃の自分に教えてあげたい。  前世の自分でもいいな。  フクと来世でも一緒だよって。 「そういえば」 「?」 「一つだけ残念だったのは、名前を忘れられたことかな。フクって、本当に覚えてないです?」 「ああ、それは」  フェリスはクスリと微笑んだ。 「私は自分の名前を『カワイイ』だと思っていました。それと……フーちゃん?」 「それかー!」    だって可愛いかったもん。確かに一番「可愛い」を聞かせていたかもしれない。  しかもそうだ。フーちゃんだのフクやんだの、その時の気分で呼び方を変えてたんだった。 「あああああ」 「どうしました?」 「恥ずかしい……けど、胸のつかえが取れてスッキリした」 「それは良かったです。心置きなく旅に出れますね」  今度は大きく頷いた。  私の寿命も千年単位で伸びるなら、世界を周りつくせるに違いない。  楽しみだ。  フェリスが……フクが諦めずに待っていてくれたおかげだ。  もう一人になんてさせない。先に逝くことだってしない。  とてつもなく長く伸びた寿命を携えて、二人で共に歩んでいくんだ。  
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