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アマチュアでも、ワナビでも、自分も一人のWEB作家なのだ。投稿サイトで物語も投稿しているし、公募も頑張っている。そんな人間にとって、自分の作品は我が子のように大切なものなのだ。たとえそれが、中学生の時に親友とやった合作であったとしても。
もし、合作で作品を応募したいと言われたら自分も拒否はしなかった。一緒に頑張ろうね、と笑ったはずだ。それなのに、彼女はあの、自分にとっては宝物にも等しい物語を――独り占めしたというのか。己一人で全部考えたものだと、藍子などいなかったのだと、そういうことにして。
――えみな、なんで!
暫くすると、LINEには既読マークがついた。しかし返信はない。既読スルー。やむなく、藍子はスマホにイヤホンジャックをさしこみ、電話をかけることにする。
「えみな、えみな!あれはどういうこと!?」
繋がるまで、何度も何度もかけなおした。やっと繋がった瞬間、藍子は思わず怒声に近い声を出してしまう。
電話の向こうで、ちょっとお、といういつも通りのえみなの間延びした声が聞こえてくる。
『声が大きいわよ、藍子ちゃん。何?あたしの一次選考突破をお祝いしてくれるんじゃなかったの?それが、まるで責めるみたいなメッセージ送ってきてさあ、無視したくなるのも当然でしょ』
「当たり前じゃん!」
声が震えた。怒りより、戸惑いと悲しみが増さっていた。
「あれ……あれ!流星のアルテナって、私達が中学の時、初めて書き上げた長編だよね?ノートにリレーで書いてたやつだよね?一緒にアイデアとか設定考えて、プロット作って……それ、えみなが勝手に応募したの?自分一人で書いたことにしたの、ねえ!?」
世の中には合作が許される公募もあるが、少なくとも秋山ライト文芸新人賞は違ったはずだ。自分一人で著作権を持っている、個人の作品のみ応募可能。はっきりと応募規定にそう書かれている。
つまり、応募した時点で、実は共作でしたは許されない。
彼女は自分一人の力であれを書いたことにして応募してしまったということになる。
「それとも、タイトルが同じだけ?ねえ、そうなら、そうだと言って。でないと、私……」
段々と声が掠れてくる。いい年の大人なのに、泣いてしまいそうだ。思っていた以上にダメージとショックが大きくて、昼間なのに目の前が真っ暗になってくる。
『あのさあ』
電話の向こうで、えみなのイライラした声が聞こえてきた。
『この際だからはっきり言うけどー?……あんな、中学の時に書いた話をいつまで大事にしてるわけ?』
「え」
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