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<9・ダイホン。>
悩みに悩んだ末、店で注文したのはポモドーロだった。ちなみにポモドーロというのは、トマトを使ったパスタソースの一種であることらしい。バジルやニンニクなどを用いたトマトソースであり、パルミジャーノ・レッジャーノを振りかけた料理のことをそう呼ぶのだとかなんとか。なお、ポモドーロというのはイタリア語でトマトのことだと知って“へえ”と思った記憶がある。
ちなみに、トマト系のパスタはいろいろあるため、ボロネーゼやミートソースとごっちゃになる人は多いことだろう。単純に言うとポモドーロはボロネーゼなどと違い“トマトソースを煮込んだ時に肉を入れていない”のだとかなんとか。なお、みんな大好きミートソースが、ナポリタン同様日本発祥だというのは意外と知られていないらしい。
この店のポモドーロは三種のチーズがかかっており、やや太いパスタを混ぜていくとどんどん熱でチーズが溶けていくのが特徴だった。チーズが大好き、トマトも大好きで頼んでみたのだが大正解だったらしい。
「んまい!」
一口食べて即声が出た。
「んーまい!……もにゅ、もにゅ、もにゅ」
「わかったから、食べながら喋るな」
やや呆れて言う帝。ちなみに彼は明太子パスタを注文していた。イタリアン的にそれがアリなのかはわからないが、彼いわく“この間ペペロンチーノやボロネーゼは食べたばかりだから”とのこと。この店にはよく来るということらしい。
窓際の席に通されたこと、ここがショッピングモールの五階ということもあって眺めが最高だった。北数平の駅はまだ比較的新しく、駅前周辺は店も増えてきたものの、まだ少し歩くとのどかな田園風景と大人しい住宅街が広がっているような町である。ショッピングモールの上層階からは、青々と広がる田んぼと、その向こうに見える山々が綺麗に見渡せるのだった。
今日はいい天気で本当に良かったと思う。もし帝が誘ってくれなかったら、自分はこのせっかくの天気の日に一人で部屋に泣いて籠って終わっていたかもしれない。
「んぐ……あ、いや、すんません。でも、ポモドーロってあんま食べたことなかったけど、美味しいんだなって」
んぐんぐんぐ、とパスタを吸い込んだところで言う藍子。
「ここのやつ、ニンニクも控えめだから重たくないし。それとチーズがケチってなくていい!トマトソースのちょっとしょっぱいのをまろやかにしているというか。あと、麺がすっごいもっちりしているというかなんというか!」
「まあ、人気メニューだからな。ちなみにちょっとニンニク強めなのでも大丈夫なら、ペペロンチーノも薦めておく」
「ペペロンチーノ好きなの?」
「ああ。コンビニのペペロンチーノもよく買う。なお、俺がよくやるのはペペロンチーノをおかずに白いご飯を食べることだ。美味い」
「あ、それは間違いなくウマイ……」
なんだろう、想像するだけで涎が出てくる。
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