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<10・サクゲキ。>
デザートはそれぞれアイスクリームを頼んだ。美味しいから食べて見ろ、それも払うからと帝が言ってくれたのでご厚意に甘えることにしたのである。
特にお勧めされたのがコーヒーゼリーだった。バニラアイスとコーヒーゼリーの組み合わせが最強だというのは知っていたが、ここのお店のコーヒーゼリーの美味しさと言ったら!
「これ、苦いからいいんだ……!」
藍子は思わず感想を漏らしていた。
「コーヒーゼリーも甘くてアイスも甘いと重たくなるけど、コーヒーゼリーがちょっと苦めの味だからバランスが取れてる、というか。それでいて、実際のコーヒーみたいなえぐい苦みと強い酸味があるわけじゃなくて……ああああああああああうまく説明できなあああああああい!……こういうのも語彙鍛えた方がいいってやつでしょーか」
「まあそうだな。ただ」
「ただ?」
「頭からっぽな主人公で話を書いてしまうのも一つ手ではあるな。だったら細かな描写なんかされなくてもおかしくない。本人が思いつかないんだから」
「……それは微妙に私のことを言ってますでしょーか」
なんか腑に落ちないが、まあいい。
とりあえず、宿題を済ませてしまおうと決める。
「さっき見た映画、囚森、なんだけど」
ぱく、とバニラアイスを一口運んで言う。
「あの話、私は怖くて凄く良かったとは思うけど……確かに、前半がちょっとダレてたかも」
「具体的には?」
「六条さんが言ってた食事シーン云々で気づいたんだよね。あの話、田舎の町まで行って、みんなで酒盛りして、禁域の森についての話を聞くまで……の間に三十分以上かかってる。よく考えたら、ちょっと長すぎかも」
ホラー映画なのだから、見る人間はホラー、つまり怖いものを見たくて見に来るわけである。
勿論ホラー作品だって、キャラクターの魅力や性格、個性を書くことは重要だ。だが極端な話、あの物語の場合魅力を丁寧に描く必要があったのは感情移入させる対象である主人公とヒロインくらいで良かったように思う。その周りの友人たちやサブキャラ、宿の主人とか大学のゼミ仲間――みたいなのは、本当に触り程度説明すれば十分だった気がするのだ。
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